Oct 22, 2007

what we can do -2-

-1-で触れたランガナタンの図書館五原則について補足を2つ。1つ目は五原則について。2つ目はランガナタンさんについて。

◆1つ目:ランガナタンの図書館五原則(1931年)

1.本は利用するためのものである (Books are for use)
2.どの読者にも、その人の本を (Every reader, his book)
3.どの本にも、その読者を (Every book its reader)
4.利用者の時間を無駄にしない (Save the time of the reader)
5.図書館は成長する有機体である (a library is growing organism)
(アメリカに持ってきた「図書館概論」ISBN:4883670813から。)

1.(Books are for use)

21世紀の日本やアメリカにいる私たちにとっては、開架式の図書館をデフォルトで使える環境で育ってきて、当たり前っちゃー、当たり前に映るけど、「ただただ置いて飾ってあるだけにするんじゃなくて、本は使われてなんぼでしょう」という考え方。大雑把に言ってしまうと、日本なら第二次世界大戦前くらいまでは、図書館は閉架式だった。んで、「超貴重な資料を永久に保存すること」が使命だった。保存することが使命ならば、誰でも触れるところに置いといてコーヒーでもこぼされちゃたまんない。だから閉架にしたし、貸出もしなかった。(ちなみにテキストによるとこういう図書館のあり方を「収蔵モデル」というのだそうで。)それをランガナタンの五原則では「for use」と言ってるように、考え方が変わってきた(こういう図書館のあり方は「利用モデル」)。「グーテンベルクの聖書」ならまだしも、今は数万部の印刷なんて簡単で、同じ10000冊のうちの1冊の本を懇切丁寧に書架に飾っておくなんてnonsense。

2.(Every reader, his book) & 3. (Every book its reader)

図書館の世界には、「良書を利用者に提供する」のが図書館の役割だと思っている空気があった。(今もまだあるのかは知りません。でも、どっかになんでか利用者を軽く扱うようなところはあると感じる。)でも、良書を選択する力というか権利というかは図書館にある(属する)のではないんですよね。「あなたには、この本が良いでしょう」なんて押し付けられるんじゃなくて、利用者個人個人に適した本がある。同時に、「こんな本、誰のためにもなりゃしない」と図書館が決めるものではなくて、どの本にも、その本を求めている利用者がいる。そんなことをこの2つの原則は言いたいんだと思います。たしかに、無限に予算やスペースがあるわけではないから、図書館は購入に際して選択をしなければならないのが現実なのだけれど。LC(Library of Congress アメリカ議会図書館)やハーバード大学図書館の方針は「世の中にある資料を全部集める」なんだって。規模が違うね。

4.(Save the time of the reader)

→これ、どういう意味だっけ?利用者に何度も来館させちゃだめだよ、必要な情報をなるたけ早く提供してあげなさい、とかだっけ?図書館情報学専攻の人(自分もだけど)、教えてください。
(2007.10.22)

奇特にもblogを読んでくれた人から教えてもらいました。
ランガナタンの図書館五原則のうちの4番目の原則。
図書館利用者は、探しているものをタイミングよく手に入れることによって満足するし、ニーズが満たされていると感じるようになる。それによって、図書館機能が向上するだけでなく、利用者から図書館が役に立つところであると認識してもらえるようになる。
っていう意味なんですって。(日本語のセンスもなくてすみません)

つまり、図書館は、利用者が必要なときに適切なものを提供することが大事で、タイミングを逃すと満足度を高めることはできないってことかな。そういう意味で、利用者の時間を無駄にするなっていう言い方になったんだろうと理解できる。
(2007.10.24)


5.(a library is growing organism)

図書館には、止まることなく新しい資料が入ってくる。状態が悪くなったり、保存期間が過ぎたものは除籍?(weeding)される。書架が足りなくなれば増築する。人間の体重と違ってやせることはない。蔵書は増えるだけ。新しい利用者がやってくればその人のニーズは新しい(可能性が高い)。ということで、日本語で「成長する有機体」と訳されている。ランガナタンさんがこの原則を言ったときは大昔だけれど、図書館にも紙だけじゃなくていろんなメディア(電子的なものたち)が登場していまや図書館員にも利用者にも情報収集に必要不可欠なtoolになっていることからも「成長」しているなぁと思う。


◆2つ目:ランガナタンさんについて
Shiyali Ramamrita Ranganathan, சியலி ராமாமிருத ரங்கநாதன்、(1892-1972)
(いやぁ、最近はwikipediaがあるから便利だねぇ。べた打ちでスペルミスすることも減ったよ)
彼は、インドの図書館学者さん。引き続きwikipediaを参考にしつつ。
「図書館五原則」が有名だけど、もともとは数学者だったらしい。コロン分類法も作ったんだと。
※コロン分類法:本の分類方法のひとつで、分類の各階層をコロン(:)で区切っていく。
分類のほかの方法としては、DDC(Dewey Decimal Classification デューイ十進分類法)、LCC(Library of Congress Classification)、NDC(Nippon Decimal Classification)などがある。

勝手にIFLA(International Federation of Library Associations 国際図書館連盟)の会長とかそのあたりの役職をやっていたに違いないくらいに思っていたんだけど、さーっと見た限り、インド出身で、イギリスに留学して、またインドに帰ってきてインドの図書館(情報)学の発展に貢献したようだ。